今や世界中の企業や団体、或いは個人における範囲でひとつの大きな"地殻変動"が起こりつつあります。
例えば米国のビッグテックの一角を成すFacebookがその社名を仮想空間を象徴するような名称である"Meta"と変更したり、デジタルアート販売価額に何と約75億円の値がつく等々...従来の産業マインドの中では考えられなかった価値観の想像(創造)と言うものが、ついに現実社会に「形」となって目前に表出して来ることになりました。
日本ではこうした面においてまだかなりの遅れを取っているとは言われていますが、それでも渋谷区が仮想空間上に自区を登場させるなど、最早その流れは第一次トレンド化しつつあると称しても間違いはないでしょう。では、この面で語る香港の現状と言うのは一体どのようなものなのでしょうか?
そのような視点でネットなどを検索して見たりすると、香港のデジタル空間での進捗を表す記事のひとつが昨年の9月29日付でJETROWeb上で掲載されていました。この記事の論点というものは大変興味深いもので、それはWeb3.0時代の到来に備えて著作権改正へ(香港)と言う、今後大きく産業界が転換して行く際の法律廻りに関する香港の試みが簡潔に纏められたものです。
実際、デジタルエコノミーに関するそれまでの法律体系と言うものは、単に現実社会=オフラインでのそれを横流ししたものが中心軸となってしまっており、解釈的にはやはり"不完全"、或いは"強引"と見えるものが多く、昨今における課題として社会的には受け取られていました。故に今回は(そうしたそれまでの)不備な点に関する改正点の提示であり、これらが可決されることになると(著作権を有する)企業や個人などにとってはよりハッキリした解釈をベースとした権利保護が実現することになって行きます。
では今回の具体的な改正点と言うのは一体どのような点であり、またどのような背景を伴うものだったのでしょうか?
まず挙げられるのは以下の通りとなります。
1.著作権作品の不正通信に対応する新しい刑事責任と言うものをベースとした"技術的中立性"を有する独占通信権の設置。
2.オンラインサービスプロバイダー(略称:OSP)に対するセーフハーバー条項(=予め定められた一定のルールのことで行動する限り、違法ないし違反位ならないとされる範囲を指す条項)の明確化。
3.著作権侵害の例外範囲の拡大ならびにデジタル環境に対応する追加侵害賠償額の法定考慮要素の増加。
例えば(1)の独占通信権の設置と言うことをより噛み砕いて説明すると、歴史的にはまだ比較的"新しい"電子的送信方法と言える「ストリーミング」などに纏わる独占権利に関してのものであり、この新設規定が適用されることになると、著作権者は有線・無線方式を通じたあらゆる電子的手段に関する権利を有することになる為、不正ストリーミングデバイス、アプリ、ウェブサイトなどの取り締まりの改善が期待されることになります。
例えば香港でも著作権者との間で大きな問題となっている国内外のテレビ番組や映画の不正視聴を可能とするセット・トップボックス(STB)や関連アプリの存在に対する取扱いがありますが、可決後はこれらの摘発強化へと繋がり、著作権者の利益や権利の保護に繋がると言う訳です。実際、この面では刑事的な制裁条項もハッキリと明文化しており仮に有罪判決を受けようものなら最高で懲役4年の刑+侵害品一品ごとに5万HKDの罰金支払いを命じられると言う内容になっているとのことです。
このように、今回はその改正案の一部を触れる形とはなりましたが、今後一層デジタル化が推進されて行くのがWeb3.0の世界・社会であるのは間違いなく、これからの状況と言うのは如何に法整備を汲まなく準備して行くのかと言う点が焦点となりますが、事情通が見る見方と言うのは法体系が商業トレンドを"追い掛ける"図式となるのは否めないと言うものでしょう。
従って「メタバース」や「NFT」と言った次世代ビジネスを司ろうと言う企業や個人が留意しておく必要があることと言うのは、それらの発展に伴う形で追従して来る法整備について常にインプットを怠らないと言うことが命題となると言うことです。香港がこのトレンドのトップに位置していることを考えると、日本は香港で起こっていることを注視しておくのがポイントと言えるかも知れません。