去る5月1日、香港特別行政区政府は今年7月から香港ー広東省間に関する行き来について事前登録許可された香港居住者の自家用車で移動することが出来るスキーム、「港車北上」を発表しました。6月1日から募集申請が行われ、承認を受けた車両は制度開始日となる7月1日以降、(香港で所有する)自家用車にて自由に大陸側への横断が出来るようになります。
この制度導入の背景というのは、今までこのテリトリー間(香港ー大陸<特に深圳や広州、或いは珠海など>)での行き来と言うものは主にビジネス目的であり、香港側も大陸(中国)側も一方の地域に対する権限や運用というものには干渉して来なかった為、各々が発行するプレートを掲げて入境すると言う"ダブルナンバー制度"で対応していた点があります。今回の制度発足の大きな目的と言うのは、「大湾区」と言う巨大経済圏での人の行き来をより一層促進することで、同地区がこれま以上に"連合"としての協力体制を築く為のものであると言っても良いでしょう。
では実際にこの許可を得る為の「申請条件」というのはどのようなものなのでしょうか?
(尚、申請条件の詳細は広東省政府が発表した通知や申請用の専用ウェブサイトでも確認できます)
<申請資格の条件>
1.18歳以上であること
2.通行許可証保持者である香港居住者であること
3.香港で登録済みの6メートル未満で運転席を含めて8名乗り以下の自家用車であること
4.香港および中国本土で有効な運転免許証を保有していること
5.中国本土から要請があれば、香港内の指定された車両センターで検査すること
6.連続30日超の滞在は不可。年間180日以上を超えて中国本土に滞在しないこと
7.中国本土や香港の規定に基ずく保険に加入すること
8.特別許可のため、年間540香港ドル(約9,180円、1香港ドル=約17円)または月額54香港ドルを支払うこと
これらの条件を満たすことが出来る香港居住者は申請→許可と言うステップを踏み、その後は同地区の行き来が自家用車で出来ることになります。ちなみに統計的な情報をご紹介すると、現在、香港で登録済みの車両数と言うのは約82万台あり、その中の約54%に当たる45万台が本スキームの対象となるとのことです。申請はコンピュータによる抽選で順次割り当てられ、必要に応じて段階的に申請件数を増やして行く予定とのことです。
政府間(ここでは北京の中央政府と香港政府)の思惑としては、一部の層を除き、まだまだ平均的な所得水準では中国を上回る香港在住者達がより自由に香港と大陸間を自家用車で行き来することになると、それに応じた観光産業へのインパクトを引き金として経済活性化の促進に役立てて行く事が考えられます。
また、ある種"カジュアル化"することになる中国への移動によって人々の交流が盛んになれば、そこに纏わる多くのアイデアや新しいビジネスなどが創出される可能性も出て来るのは自然な流れであり、結果的に習近平政権悲願の「一帯一路」の成功への試金石のひとつとなる可能性を秘めています。
何にしても、明らかな「経済効果」が見て取れる日が来るのも、意外と我々の予想以上に早いタイミングで訪れるかも知れません。