既にメディアやネットでも連日報道されているように、8月後半から9月上旬にかけて香港を襲った2つの巨大台風である9号(Saola/サオラー)、そして11号(Haikui/ハイクイ)が与えた影響は、当地にかつて無いほどの甚大な被害を及ぼすことになりました。その規模が物凄かったと言えるのは、この2つの台風から生じた気圧の谷による降雨量と言うものが、過去140年の歴史の中で最大のものとなったと言うことです。
事実、9月8日の午後11時からの1時間は実に158.1ミリと言う驚愕の降雨量となり、その影響により街では至るところが冠水、また、水没するタクシーや滝のようにMTR(香港の地下鉄)の階段に降り注ぐ濁流等々...まさにその映像を形容すると「地獄絵図」と言っても良いほどのものとなりました。
さて、そんな形で大きな被害を被ることになってしまった香港ではありますが、今回は、台風を形成する雨や風の強度について当地の市民に警戒態勢などの喚起を呼びかける「セキュリティー・メイジャー」と言うものについて、改めてご案内して行くことにします。
香港ではこうした台風などの自然災害が発生した際、一般市民や関係機関などに対して即座にその災害の強度を表す情報提供する為のシステムがあります。所謂、「台風シグナル」と呼ばれていて、具体的には台風の接近や影響度に応じて段階に1〜10までのナンバーが振られている形となります。以下は詳細です。
シグナル1:
●台風の接近が予想される初期段階
●風がやや強まり、天候が不安定になる様相を呈している状態
●一般市民には注意喚起されるも、この段階では日常生活に大きな影響なし
シグナル3:
●台風が接近し、風の勢力が強まって来た段階
●強風や激しい雨が予想され、交通や野外活動に支障が出る可能性が示唆
●一般市民は外出を控えるよう呼びかけられ、安全対策を取る必要があります
シグナル8:
●台風が非常に接近し、非常に強い雨と大雨が予想される段階
●強風による建物や樹木の被害、洪水、高波などが発生する可能性がある状態
●学校や公共交通機関が停止し、市民は屋内に逃避するように指示されます
シグナル10:
●台風が直撃し、非常に猛烈な風と豪雨が予想される最も深刻な段階
●非常に強力な風による広範な被害が予想される段階であり建物や樹木の倒壊、洪水、高潮などの危険性が高まります
●市民は命と安全を保護するため、学校や事業所は閉鎖され、公共交通機関は運用を停止します
●市民は屋内に避難し、窓やドアをしっかりと閉め、安全な場所で待機する必要があります
またこうしたシグナル形式のセキュリティー・メイジャーだけでなく以下のような警報も、その段階において発令される場合があります。
1.強風警報(Strong Wind Warning)
●強風が予想される場合に発令
●風速や風力が一定の値を超えると発令され、風による被害や交通への影響に警戒喚起
2.豪雨警報(Heavy Rain Warning)
●大雨が予想される場合に発令
●雷雨や集中豪雨、大規模な降水量、また洪水、土砂崩れのリスクが高まるものを言います
3.洪水警報(Flood Warning)
●文字通り、洪水が発生する可能性が高い場合に発令
●河川の水位上昇、氾濫や浸水の危険性が高まると言う通知
4.高波警報(High Wave Warning)
●高波が予想される場合に発令
●海岸や沿岸地域で大きな波が押し寄せる可能性があり、海水浸水や海難事故発生への注意喚起
5.熱中症警報(Heatstroke Warning)
●高温多湿の状態に発表される事があります
●市民には適切な対策を取るよう示唆(十分な水分補給、また涼しい場所での休息など)
6.黒雨警報(Black Rain Warning)
●非常に激しい雨が予想される状況を指す
●1時間あたりの降雨量が70ミリ以上に到達、或いは予期される状況
(今回のケースはまさにこの6番に相当するものとなりました)