香港を語る際には多くの"切り口"が存在するのは今までも繰り返しご紹介して来た通りですが、今回は香港の芸術性や文化性を物語る上でとても重要な「映画」と言うものを題材の中心として置き、各ジャンルの代表作品をご紹介することで読者の方々に従来とは違った意味でのこのテリトリーの特色をご案内して行くことにします。
映画と言うと、例えばハリウッドなどでしたらアクションや社会性を突き詰める分野での映画、或いは子供向けやSF等々...とても多くの様々な分野に分かれており、そうした中で私たちは(それらを製作する)米国の文化や芸術を楽しみ、また同時に学んで行くステップを踏んでいます。勿論、こうしたことは香港映画を語る際でも同じことであり、中には香港作品のみに傾倒する熱狂的なファン層も存在しているのは想像に難くありません。
さて、今回は香港映画において上述のような分野(ジャンル)での代表的な作品を(独断と偏見が混じりますが)ご紹介させて頂くことで、香港の輩出する映画の味=特色というのがどのようなものであるか?を感じて頂きたいと思います。
1.アクション映画:『インファナル・アフェア』
2002年に公開されたこの香港映画は警察と麻薬組織の内部に潜り込んだ2人のスパイが繰り広げる緊迫感溢れるストーリーです。主演はトニー・レオンとアンディ・ラウであり、彼らの演技が光る中、お互いに相手の正体を探り合いながら、複雑で予測困難なプロットが観客を引き摺り込んで行きます。このように単なるアクションのみならず、心理戦を巧みに取り込んだこの作品は香港映画としてこのアクション分野で傑作と評価されるものの一つとして燦然と輝いています。
2. 社会映画:『イン・ザ・ムード・フォー・ラブ』
ウォン・カーウアイ監督の2000年の傑作は1960年代の香港を舞台に互いの配偶者が浮気をしていることを知った二人の隣人が友情を通じて結ばれて行く姿を描いた作品です。恋愛映画の嗜好を覆すこの作品は都市の喧騒と孤独、そして情緒豊かな音楽を駆使し、社会的な対話とここの人間ドラマを見事に融合させた社会性映画の代表的な作と言えるものでしょう。
3.政治映画:『2046』
香港の巨匠であるウォン・カーウアイ監督によるこの『2046』は未来の香港を背景に愛と孤独、時間の流れを織り交ぜた作品です.政治的変革の中で生きる登場人物たちの複雑な感情が視覚的に美しく、哲学的に深い形で表現されています.独自の映像美と物語性が香港映画が抱える政治的・社会的テーマに対する独自のアプローチを示しています。
4.エンタメ映画:『Kung Fu Hustle』
スティーヴン・チョウ監督によるこのコメディ映画は香港のエンターテイメント文化を軽妙且つ斬新に描いたものです。アクションとコメディが見事なバランスを保ち、武術映画の伝統を踏まえながらも新たな要素を取り入れていることで新境地を確立している作品と言えます。こうした独自のスタイルを構築しつつもその中に笑いを取り入れ、観客を楽しませるエンタメ映画の傑作として評判を博しました。
5.子供向け映画:『天注定』
この映画は1995年に公開されました。監督はジェフリー・ラウで、その内容は中国の古典小説である「西遊記」を基にしたファンタジーです。主人公の孫悟空が冒険と愛、またその宿命とは何か?というテーマを求め、旅の道中で起こる様々な出来事や出会いの数々を巧みに描写し、子供たちから大きな反響を得るに至りました。これはその後シリーズ化へと発展し、ユニークなキャラクターと幻想的な世界観で観客を魅了した作品として評価されています。
以上、ざっとではありましたが、恐らくこれらの映画は香港人の中で映画芸術と言う視点からは外されないものの数々であると考えます。我々日本人が、多くの映画、特に"名作"と言われるものに対して心のどこかで精神的な拠り所にしていたりする人達が居ることを考えると、(こうした切り口で)彼らとの交流を持つと言うのも、いつもとは違う意味で人間関係の深化には役立つものになるものかも知れませんね。