香港はその立地から見ても大きなアドバンテージを持っている地域です。他のアジア諸国へのアクセスにしても扇のようにその手足を伸ばせばアジアの多くの主要都市に5時間以内に到着することが可能であり、故に物流や貿易面での発展をして来たと言うのは極めて自然な流れでありました。
また、香港はその歴史の中で西洋(英国)と東洋(中国)の接点的な立ち位置を強いられて来た背景が存在していた為、他の中国の主要都市では決して見ることが出来ない"異質な形"の成長を遂げています。
その根幹的な要素は、(上述の)「物流」ハブや「貿易」と言う実業がベースとなっていたと言うのは明らかですが、それらの効果を加速する為に注入された「金融」に関する西洋のノウハウが、当地の経済発展を更に爆発的なものにする後押しとなったことは言うまでもありません。
では、香港の価値とその市場の特色と言うのは、上記を含めて一体どのようなものとなっているのでしょうか?
先ず最初に前提として理解しなくてはならないことは、立地的な優位点とは全く異なる香港の"ハンディキャップ"です。大きく言うとそれは2つあり、それらをまともに捉えて考えるとした場合、香港と言う地域は本来、経済発展するには"ほど遠い"ところに存在していた言っても良いのかも知れません。
具体的に言及すると、最初に挙げられるべきハンディと言うのは当地の面積です。
実際の話、香港は他の国際的な都市などと較べてもまさにその面積的なサイズについては"極小"と表現しても良い程の水準であり、当然、ここには中東の油田のような自然の資源がある訳でもありません。こうした前提条件ゆえ、当地の産業発展の過程の中では立地的な長所を活かす「サービスを提供する」と言うスタイルが時代の変遷とともに定着して行ったと言うのは理解出来ることでしょう。
事実、そうしたことを如実に表すのは現在の当地のビジネスを構成する業態の殆ど(年度調査の統計では常に90%以上)が何らかの形の「サービス」を提供すると言うものが産業の中心になっていることからも明らかです。
そして、こうしたスタイルを後押しする為の各種制度も香港を押し上げる為の要素として発展して来たと言えます。
当地は、既に何度もご紹介しているように、アジアで一番と言えるほど競争力のある税制を敷いています。例えば、直接税と言われる課税方法ひとつ取っても香港が採用しているものは僅か3種類(法人税16.5%<軽減税率8.25%>、給与所得税(最大15%)、不動産税(15%))に止まっています。また他の細々とした各種課税(売上税、付加価値税(VAT)、キャピタルゲイン課税、相続税等)は現在では当地に存在すらしません。こうした極端にハードルが低い市場を体系化していると言う点が香港の大きな強みとなっているのは間違いありません。
また法制度についても、根底として流れているレッセフェール(自由放任主義)を基としていることもあり、コモンロー下において自由な資本の移動や自由なビジネス環境の提供、また、容易な外貨両替サービス提供を実現しています。ビジネスに対する政府の介入は最小限に抑えられていると言う点も、見逃せない特色のひとつであると捉えることが出来ます。余談とはなりますが、上海などの中国の大都市が香港に決定的に遅れを取っている点が上述の項目の中の一つである"資本の移動"が可能であることを指摘するのは専門家や金融業者、或いは当地の市民も主張する周知の事実と言えます。
そしてそうした強みを支える人材についても、当地は一線級のレベルを維持しています。例えば多言語対応を可能とする者は"殆どである"と評しても良いほどであり、またそうした人材を輩出する教育水準も香港は世界的にも評価が高く、香港自身が自画自賛するポイントの一つと言っても良いものです。
まだまだそれ以外の要素は沢山あるのは事実ですが、そうしたことを含めてこれらの特色が非常に上手い形でブレンドしているマーケットがこの香港と言う地域の代表的な特色であると言っても良いでしょう。