香港の経済状態を測る上で有効な"指標"と言うものは「不動産価格」と「ハンセン指数」が挙げられます。この二つは人々がイメージする"景気感"と言うものとも絶妙に絡み合っており、これが一定の分岐点を超えると消費活動が活発=好景気になると考えられています。
そして今年、香港はようやく本当の意味でその分岐点を"超えて来た"と形容出来る状態になって来ました。
具体的な例を挙げると4月の第1週における香港国際空港経由の訪問者総数があります。どうやらこれが(新型コロナウィルス感染症が蔓延した)2020年1月以降で最大の数となったこともあり、この勢いが今後当地の景気の下支えとなって行くとの強い見方が市場関係者の間で広まり始めました。
この要因を分析すると、3月末にアジア屈指の芸術の祭典「アートバーゼル香港」を皮切りとして、世界的にも人気を博す名物スポーツイベントである7人制ラグビーの世界大会「香港セブンズ」(4月5日〜4月7日)がそれに続き、更にはビジネス界で「HSBCグローバル・インベストメント・サミット」と言った投資家向けイベントが開催されるなど、大掛かりな各種イベントがこの訪問者総数の値を"後押しした"と言っても良いでしょう。
実際、それぞれのイベントは結果上でも好印象を強調出来るだけのものがあり、「香港セブンズ」は3日間のチケットが完売、また「HSBCグローバル・インベストメント・サミット」では、参加者が3,500名をゆうに超え、まさに大盛況であったとのことです。パンデミックの影響を"過去のもの"とするには(結果的に)数年を要することにはなりましたが、今年がようやくその起点になる年になって行くことは間違いないものと思われます。
このように2024年の第二四半期に入る段階での香港は(近年と比較すると)かなり堅調な景気感となりつつある状況ではありますが、一方では(こうしたことに浮かれず)冷静に捉えておく必要のある数字も存在します。確かに訪問者総数は増加をしたと言え、その反面としては、より大きなマーケット目線で捉えようとするとかつてのような勢いは"まだまだ戻っていない"とする声も多数存在しており、それが本文の冒頭で触れた「ハンセン指数」の中に反映されていたりします。
株式相場の指標である「ハンセン指数」単独で香港経済の現状を観察した場合、その値は2021年に記録した最高値から依然として半分近くまで下落したままの状況であり、香港の売りのひとつである新規株式公開(IPO)に於いても株式市場はその勢いを保っていません。故に香港が「国際金融センター」として世界にアピールするコアな金融ビジネス面に於いては恒常的に"手持ち無沙汰な状態"から抜け出せていないと言うのが現状でもあるのです。
また(不安要素を煽る訳ではないですが)、この"停滞要因"を助長するのではないかと捉えられる「国家安全条例」(=スパイ行為や国家転覆の取り締まりを強化する条例)の導入についても、メインボードを占める大手企業経営者層がその導入・実施の経緯を慎重に見守っていると言うのが現状として横たわっており、この影響次第では力強い反応を見せた先の4月の好景気の動きと言うものが台無しになる可能性も多分に含んでいます。
こうしたことを織り交ぜた上で当地経済復興のための課題(=キーポイント)が一体何であるかを、次回のBlogの中で考察して行くこととします。