香港旅行を計画するとその中に必ず組み込まれるアクティビティーがひとつあります。それは「飲茶」と言われるものであり、文字通り、お茶を飲みながら(点心などの)軽食を取って楽しむことですが、今回はこの「飲茶」をテーマとしてその起源や歴史、文化について掘り下げることでより深い観点から、香港で生まれたとされる、この習慣について考察することにしましょう。
●起源と歴史
「飲茶」は中国広東省で生まれた食事形式であり、お茶を楽しみながら軽食を提供する伝統的なスタイルでしたが、19世紀後半から香港でこの「飲茶」が発展したことによって現在の形に近いスタイルが確立されたとのこと。尚、厳密な"起源"と言うのは複数の諸説がある為に明確には出来ないが、歴史を辿れば唐の時代まで遡ると考えられており、座禅中の眠気覚ましに利用されたのがキッカケとされています。
●普及
「飲茶」の普及は香港が飲茶文化の中心地としての役割を果たしたことが主要因とされています。19世紀後半、当地には多くの中国人移民が集まる場所となり、そこで広東料理と飲茶文化が広まる基礎が構築されることになりました。特に20世紀初頭に香港で飲茶が大流行した際は、多くの飲茶レストランが開店したこともあって、「飲茶」の知名度が急速に広がるだけでなく、当時から元々貿易港として機能していた香港には外国からも沢山の貿易商が集まる場所でもあった為、訪れた外国人や香港出身の移民によって「飲茶」は世界中に広がるキッカケを作ることなります。こうして国際的な人気を獲得することになった「飲茶」は香港を訪れる観光客にとって伝統的且つ人気高い食事体験として昇華することになりました。
更に近年では、ソーシャルメディアやインターネットの普及により、「飲茶」の情報や様々な写真(点心なども含む)が簡単に共有されるようになったことで世界中の人々がこの「飲茶」の魅力に触れる機会が増え、その人気が更に高まって来ています。
●特徴と文化
・お茶
「飲茶」には様々な茶葉を使用しますが一般的には以下のようなものがあります。
1.ジャスミン茶
「飲茶」で良く提供されるお茶の一つであり、花の香りが特徴です。爽やかな味わいで、点心などとの相性も抜群であると言えるでしょう。
2.プーアール茶
中国の特産茶のひとつで、熟成させたものが主に飲まれています。濃厚である為コクがあるお茶と言え、ジャスミン茶と人気を二分するお茶です。
3.ウーロン茶
軽やかな香りとフルーティーな味わいが特徴で、「飲茶」との相性が良いお茶です。またウーロン茶も種類によって味わいが異なる点も特徴のひとつと言えます。
4.ロンジン茶
香り高い緑茶であり、爽やかな味わいが特徴です。これもまた「飲茶」との相性が良いお茶のひとつと言えます。
5.緑茶
清涼感があり、さっぱりした味わいが特徴です。勿論、これも「飲茶」との相性は良いですが、本場香港や広東省などで提供される頻度は少ないかも知れません。
・点心
点心は「飲茶」には欠かせない軽食であり、様々なし種類が存在しています。観光客等にとってはむしろこちらがお目当て(?)と言っても良いかも知れませんので一部、代表的なものをご紹介致します。
1.焼売
薄い皮で包まれた餡を焼いたり蒸したりして作られる点心で、豚肉や海老、牛肉などが中身の具材です。
2.小籠包
こちらも焼売同様、薄い生地で包まれた肉餡が入っている蒸し料理であり、中にはジュシーなスープが詰まっている点心です。
3.蝦餃
薄い生地で包まれたエビの餡を蒸したもので、プリプリとした食感が特徴です。食する時には辣油を使用すると更に味が引き立ちます。
4.鳳爪
鶏の足を調理し挙げたものであり、香ばしくてジューシーな食感が楽しめます。
・文化的側面
こうしたものを飲食しながら家族や友人、或いはビジネスパートナー達との親睦を深めるのがまさに「飲茶」の真骨頂であり、香港や中国(&中華圏)ではとても重要な儀式のひとつとして確立されています。また「飲茶」では物理的にも複数の皿を皆でシェアすることになる為、自然と相手方との距離が縮まることで交流の度合いが深くなり、外国人である我々は、そうした「飲茶」が作り出す香港や中国の文化的な背景を理解して置くと、より良い時間を彼等と過ごすことが出来る様になるのは間違いありません。