2024年2月28日、香港政府より2024/2025年度(該当期間:2024年4月1日〜2025年3月31日)の財政予算案が発表されました。例年、この辺りのタイミングで発表される財政予算案ですが、これは言い換えるとこの財政予算調達の為の制度=税制を発表するためのものとも言え、その内容に世間の注目は集まります。勿論、香港では例年、税制そのものは比較的シンプルなもので収まっていることもあるので毎回殆ど"変わり映えは無い"と言うのがトレンドではありますが、どうやら今回は幾つかの変更事項が盛り込まれているとのことです。ではそれらが一体どのようなものであるのかと言うことを主題として次年度税制の概要を(前回の法人部門に引き続いて今回は個人部門に於ける各種の措置について)ご案内することにします。
<背景>
2024年2月28日、例年このようなタイミングとなる香港財政予算案が財務長官の陳茂波氏によって発表されました。同氏は2023/24年度の成果として当地GDPが前年比で実質3.2%増となったことを発表し、香港経済がようやく回復基調へと転化して来たことを強調しました。要因分析としてはそれまでコロナ禍による打撃で低迷していた個人消費が所得向上により増加したことと、観光業部門に於けるインバウンド需要が回復を示し当地経済を押し上げる原動力となったとのことであり、これらに政府の取り組みが功奏した結果であるとのことです。
一時は徹底したコロナウィルス感染対策によって非常に困難な時期を過ごさざるを得なかった当地経済ではありましたが、同対策の撤廃を機として訪れた好機を逃さず、成長戦略を粛々と実践して来たことによる影響が良い形で次第に顕在化して来たことにより、例えば航空運輸分野等では右肩上がりの情勢が今後も継続すると見られていたり、また上述のようなインバウンド観光の勢いも強力で、引き続き当地経済の成長を下支えして行くことが予想されています。
では注目の税制案に関してどのような項目が目新しいものとなっているのでしょうか?
以下に挙げることが現在、香港政府が考えている財政・税務の政策原案の内容となります
<税制の政策案>
1、2023/24年度の給与所得税に関してはHKD3,000を上限として100%減税を行う。
またパーソナル・アセスメントの税額に関する2段階標準税率制度の導入する。
2、2024/25年第1四半期いの住宅用不動産及び非住宅用不動産の固定資産税(レート)をHKD1,000を上限として免除する
3、住宅用不動産取引に関する特別印紙税、購入者印紙税、新住宅印紙税の取り消しにする
4、2024/25年以降、賃貸物件の原状回復に係る費用に対する税額控除の承認する
こうした変更は個人単位に置き換えると実質的に手残りの金額が増えることに等しく、それが例え単年だけのものであったとしても域内に於ける消費活動のテコ入れとなって行くのは明らかです。
またこのように、市民の生活環境への"手助け"を税制の枠組みの変更を通して行う香港政府の手法というのは相変わらずのスマートさを感じさせるものであると言え、こうした姿勢の先にあるものと言うのは、従来からある基幹産業のより一層の成長と、新しい産業への投資をバランス良く育て上げるための礎(いしずえ)となることは間違いありません。
以上、今回は来たるべく年度に於ける香港の税制改正を軸とした考察を提供させて頂きました。