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香港の政治の外観と課題

更新日:2024年10月09日

香港の政治的基本線と言うのはベースとして「一国二制度」を遵守し、独自の自治を認められた"特別行政区"として運営を行うと言うものです。この「一国二制度」と言うのは、香港が1997年に英国から中国に返還された際に制定された制度であり、本土のそれとは抜本的に異なる政治形態を採ることにあります。

事実、香港は自由経済体制を保持し、高度な自治を標榜することで多くのことを成し遂げて来ました。そしてこの体制は名目上、2047年までとされています。しかしながら、返還以降、香港の政治のシステムは次第に変容を遂げてしまっているのは事実であると言えます。近年、当地は非常に色濃い形で"中国化"が加速していると指摘されており。今回は、そんな香港政治の特徴に触れ、過去から現在に至る構造的課題、及び将来の展望について論じることとします。


1.香港の政治体制の構造
香港の政治体制は、立法、行政、司法の三権分立を基礎とし、その上で中国政府の統治権が強く反映される形で設計されています。香港特別行政区の最高責任者はその名の通り「行政長官」であり、香港の行政の最高権限を持っています。

行政長官は、1,200名からなる「選挙委員会」によって選出されその選挙は中国政府の影響を強く受けることが多く、実質的には中国政府の'意向に従う人物が選出される傾向にあります。こうした事によって、行政長官任命の過程に於いては香港市民の意思がどれほど反映されているのかについて、長年に渡って議論が続いているのは事実と言えます。


他方、立法府である「立法会(Legislative Council)」は、立法権を行使し、政府の予算を審議・承認する役割を担っています。立法会の議席は70席で、そのうちの半分は「地元選挙区(Geographical Constituencies)」によって選ばれ、残りの半分は「機能団体選挙区(Functional Constituencies)」によって選出されます。

機能団体選挙区では、特定の業界団体や職能団体の代表者が議員を選ぶ仕組みになっており、一般市民の選挙権が直接は反映されにくい構造になっています。この構造により、ビジネス界や中国寄りの団体が大きな影響力を持ち易く、結果、民主派の議席数が抑制される傾向があります。


2.香港基本法と「一国二制度」の役割
香港の政治体制の基本となるのは、「香港基本法(Basic Law)」です。この基本法は、香港の高度な自治を保障し、行政、立法、司法の各権力の分立と、その権限を明文化しています。これにより、香港は自らの法律を制定し、司法制度を独自に運営することが可能でコモン・ロー(Common Law)に基づく法体系や財政・税制の独立などがその特徴とされています。


しかしながら、この香港基本法と言うのは中国政府の権限を強く裏付ける条項も含まれています。例えば、基本法第23条は「国家の安全に関わる法律」を香港が設定するよう規定していますが最終的には中国の全国人民代表大会常務委員会(全人代)の意向が最優先と言った具合です。

このように、「香港国家安全維持法」と言うのは反逆、分離独立、テロ活動、外国勢力との結託、と言った行為を厳しく取り締まるものとして存在している法律で、これは同時に香港の自治権、或いは表現の自由や集会の自由といった基本的権利を抑制する方向へと作用しています。


3.民主化運動と政治的対立
香港の政治システムに於ける最大の論点は、「民主化」と中国政府の「統治権」のバランスにあります。

1997年の返還以来、香港市民は普通選挙の実現を求めて度々活動を公に行って来た訳ですが2014年の「雨傘運動」や2019年の「逃亡犯条例」で我々が目にしたものと言うのは、中国政府(及び香港政府)の"弾圧"と言うものでした。


その為、香港の政治システムはそれ自体が混沌の中へと追いやられ、これを危惧した中国は2021年の「選挙制度改革」でとうとう立法会選挙の候補者に対する"愛国的検査"を導入、結果、民主党の議員はこの時点から(立候補することすらできなくなってしまう)と言う歪な状況が作られることになってしまいました。


こうした改革は(香港の「一国二制度」を名目上は維持しつつも)当地の運営の多くの部分で中国本土のイニシアティブによって動かされて行くことが世間に明白に露呈してしまった出来事のひとつと言えるものでしょう。


4.今後の展望と課題
香港の政治は、現在、上述した「中国化」と「一国二制度」の維持と言う二つの相反する動きの中で揺れ動いています。中国政府は、香港の高度な自治を認めつつも、国家安全保障の名の下に自身の統治権を強化しており、これに対する香港市民の反発と言うのは今でも水面下で継続的に続いています。こうした状況の中で、今後香港がどのように政治的安定を維持し、民主的権利をどの程度保障出来るのかが今問われている課題のひとつと言えます。

何故ならば、香港の政治体制と言うのは中国側の影響を受けて行くと言うのは不可避な事であり、その反動として民主的権利や自由が阻害&制限される可能性は高まるのは否めないことです。同時にこの課題に対する国際社会の反応や香港市民が抱えているフラストレーションが、そうした方向性に大きな"揺さ振り"を与えることになる側面があるのは否定出来ないものとなることでしょう。

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