香港は歴史的、経済的、そして政治的に中国にとって重要な地域であり、その重要性は現在に至るまで維持されています。中国の一部でありながら「一国二制度」に基づく『特別行政区』としての独自の地位を持つ香港は、経済の中心地としての役割や地政学的な位置、中国国内外との"橋渡し役"としての機能など、複数の要因で戦略的な価値を今でも提供しています。
今回のBlogでは中国が何故、香港をここまで重要視し続けるのか?と言う点を基本線に置き、経済、政治、社会の断面からこのテーマについて考察して行くことにします。
1.経済的要因
今まで香港は中国経済にとって重要な貢献を果たしてきました。特に1990年代後半の返還後から香港を通じて外国資本を呼び込んで行くと言う手法を積極的に採用し、大きな成功を収めて来たのは特筆するべきレベルの出来事です。香港は(英国統治時代から)"自由貿易"と言う名のもとにアジアの国際金融の勇であり、そこには中国本土には無い様々な市場経済の特徴や経験、ノウハウを兼ね備えています。
こうしたこともあり、香港は中国にとって「世界への窓口」となっただけでなく、他方では(香港の信用によって)多くの多国籍企業や金融機関が中国・アジア市場へ進出を行なえる土壌を構築することを可能としたのです。故に中国はこうしたメリットを存分に享受出来るが故、香港を重要視していると言う論理は想像に難くないものでしょう。
2.地政学的要因
香港の地理的な位置と言うのもまた中国が香港を重視する重要なポイントのひとつです。何故なら香港は広東省や珠江デルタと言った中国南部経済圏と密接に結び付いている為、香港の存在がこれらの地域の発展に強い影響を与えています。
また中国沿岸部と東南アジア市場をつなぐハブの役割も同時に果たしており、物流と貿易の中心地としても十分に機能している点も忘れてはなりません。また、地政学的には、香港の安定が中国の国内統治の一貫性にも影響を与えている為、中央政府にとって当地の統制は政治的な面で非常に重要なポイントとなっている点も肝要です。
逆に言うと香港の混乱は他の特別行政区や沿岸都市への影響が懸念される可能性が大きくなる為、中央政府は香港の安定を維持することに腐心しているのが実情であるとも言えます。
3.政治的・社会的要因
中国にとって香港は「一国二制度」の象徴的な存在です。1997年の返還時に香港の"高度な自治"を中国が認めたのも、この制度は来たるべき(?)台湾との将来の統合に向けたひとつの"モデルケース"として位置付けているからです。中国政府は香港の統制を維持することによって自国の主権と領土の一体性を国内外にアピールを繰り返して来ました。
しかしながら、香港市民が考える政治的自由と中国政府の中央集権的な統治方針は度々衝突を繰り返して来たのも事実と言え(例:2014年の雨傘運動&2019年の民主化デモ)、依然として両者の間には根本的な考え方の違いと言うのが存在していると言えます。
4.国際的な影響力
香港は中国にとって国際社会との関係を築く上で重要な拠点です。香港の法制度は英国の影響を受けており、これは西側諸国との取引において高い信頼性を提供しています。つまり香港の安定が揺らいでしまうと、それは同時に中国の国際的な信用に悪影響を与えるリスクが伴います。特に米中対立が激化する中で香港問題がが外交問題と化した場合、経済制裁や制限が課せられる可能性が出て来る為、中国政府は香港の管理に細心の注意を払う必要が出て来ると言えます。
以上、様々な局面から中国が香港を重要視する理由と言うものを見て参りました。
結論から言うと、やはり香港の安定と繁栄と言うのは中国全体の発展に欠かせない要素を多くの面で含んでおり、中国政府はその価値を維持する為に多角的な戦略を展開しています。つまり、その扱いについては"慎重な匙加減"と言うものが今後一層要求され中国政府の手腕が問われていると言うことでしょう。